「なぜ、日本人ばかりがスーツを着なくてはいけないのか?」
「日本の夏にスーツを着るなんて正気の沙汰ではない」
「なぜスーツごときで、あれこれダメ出しをされなければならないのか?」
日本人がいつもスーツを着なくてはいけない、ということはありません。
それは日本人の勝手な思い込みです。
欧州と同じように必要のある人が着れば良いだけです。
しかし、スーツを着るべき人が、着るべき場でスーツを着ていないから、色々な問題があるのです。
緯度の高い欧州と亜熱帯に近い温帯の日本とでは、特に夏の気候がまったく違うわけですから、日本独自のスーツスタイルがあって良いと思います。
むしろ、あるべきだと思うのですが、スーツの基本を学んでいない日本人には理に適ったスーツスタイルを生み出すことができません。
暑い夏場に毎日スーツを着る必要もないのですが、人と会う機会が多い人はどんなに暑くてもスーツ、最低でもジャケットスタイルを準備しておくべきです。
クールビズとは、ジャケットを脱いでシャツ一枚になってネクタイを外しておしまい、ではないのです。
この装いだと確かに涼しくはなりますが、それで相手に敬意を払っているといえるでしょうか。
現代日本のクールビズスタイルは自分本位のカジュアルな装いであって、他人への配慮を旨としているスーツスタイルの基本理念からは外れている装いなのです。
カジュアルな装いのことを自分本位だといいました。
だからカジュアルはすべていけないか、というとそうではなく、カジュアルでも他人へ配慮した装いはあります。
ビジネススタイルでもっとも用いられるのはジャケットスタイル(ジャケパンスタイル)です。
「紺のジャケットにグレーのウールパンツ、人に会うなら紺やワインレッドのソリッドタイ、プレーントゥの革靴」
この装いなら、よほど畏まった場でない限り、礼を失する事はありません。
日本人のカジュアルは、一気に部屋着になってしまいますが、カジュアルには様々な段階があります。
オンビジネス、パーティ、シティ、タウン、スポーツ、アウトドア、ルーム、ベッド、、、、
ざっと挙げただけで、これだけの種類があります。
そのどれもがTPOを判断して着分ける必要があるのですが、日本人のカジュアル区分は、外出着と室内着程度です。
最近では、室内着での外出も当たり前になりつつあります。
個人の趣味に口を出す訳ではありませんが、個人の趣味は他人の迷惑とならない部屋の中でやるべきです。
たとえば、アウトドアウェアやスポーツウェアを着るなら、それらを着るのに適した環境で着るべきなのです。
本来、街中にダウンジャケットやジャージで出掛けることは、恥ずべきことです。
しかし、他人に迷惑をかけない限り、本人がそれを恥ずかしいと思わないなら、個人的に責める気はありません。
最終的に不利益を被るのは、ご本人だからです。
ただ、いくらカジュアルOKだからといって、その格好で出勤をすべきではありませんし、仕事に臨むべきではないのです。
スーツを着る必要があるのに着ない、着てもルールやマナーを守れない。
流行りと言われれば、なんの疑問も抱かずに袖を通す、パーティの招待状に「カジュアル」とあるだけでパニックになる、
エブリディカジュアルと言われれば、ロールアップしたデニムとスポーツシャツで出勤する、
クールビズ・ウォームビズという中途半端なドレスコードを国が掲げて、業界も個人も適当に乗っかってしまう、、、
どれもクレイジーです。
海外では、社会人はスーツなどという狂ったルールもマナーもありません。
着るべき人は着て、着なくて良い人は着ないだけです。
着ない人々は、自分の仕事に誇りを持っているので、スーツを着ないことになんの引け目もありません。
スーツを着る必要がある人もまた、誇りを持って着ているのです。