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革靴のメンテナンス(汚れ落とし編)

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2013年12月9日の記事ではかんたんなメンテナンス方法を、
同年12月10日の記事では雨対策と水洗いによるメンテナンス方法を、
2014年6月27~29日の記事では汚れたシューズの再生を兼ねて革靴のメンテナンス方法を
ご紹介しました。
 
今回は、革靴の汚れ落としに特化してご紹介します。
 
汚れ落としについては、賛否あります。
私の持論は、
毎回の汚れ落としは必要ないが、年に1~2回程度は必要、というところです。
毎回必要ないという理由は、以下の通りです。
 
革靴の汚れとは、主に付着したホコリや泥、古くなったクリーム類です。
ホコリや泥は、毎日のブラッシングや乾拭きで除去可能です。
古いクリームは、クリーナーと呼ばれる汚れ落とし剤で除去するのが手っ取り早いのですが、多くのクリーナーは効率よく脂分と蝋分を除去するために成分が強く、革の脂分を必要以上に除去してしまいます。
 
革は有り体にいえば、死んだ動物の皮ですから、適度に脂分を与え続け保革する
必要があります。
せっかく保革されているのに、汚れ落としのために必要以上に脂分を除去してしまうと、一時的にとはいえ、革を傷めてしまうことになります。
汚れを溜め込んでしまうよりはマシかもしれませんが、それも毎回ともなると、メンテナンスしているのか、革を傷めているのか判らなくなってしまいます。
個人的には、強力なクリーナーの使用は極力避けたほうが良いと思っています。
 
では、どうやって汚れを落とすのか?
 
話が飛びますが、
油性ペンで書かれた文字を同じ油性ペンでなぞると、前に書いた文字が消えてしまったという経験をしたことはありませんか?
これは油性インクを油性インクで溶かしているわけですが、靴クリームも主成分は脂(油)です。
つまり、前に塗ったものと同じクリームを靴に塗れば保革しながら、古いクリームを除去できるのです。
これをクリームの「
入れ替え」と表現します。
石油溶剤系のクリーナーも同じ原理なのですが、クリーナーの多くは脱脂だけで保革効果はありません。
より革に優しい方法は、同じ成分の脂分で洗えば、古いクリームを落とし易い、というものです。
 
手入れ前の靴です。
イメージ 1

中古購入した靴でクリーニング済みとのことでしたが、かなりくたびれた状態で、お世辞にも
良い状態とはいえません。脂分が抜けて革の表面がカサついています。
 
イメージ 2
シューキーパーを入れました。
同系色のクリームだと汚れやクリームを除去してる実感が湧かないので、
無色(白)のクリームを使います(
M.モゥブレィ シュークリームジャー ニュートラル)。
イメージ 3


白い布に無色の乳化性クリームを掬いとり靴を撫でるようにクリームを塗りつけていきます。
イメージ 4

 
布に黒(もしくは茶色)が付着すれば、古いクリームが除去できたという証拠です。
イメージ 5

 
布の位置を変えながら、靴全体を同じように撫で回します。
早く汚れを落とそうと焦って力を込めて擦ると、革の表面を傷めます。
彼女の身体を撫でるように優しく古いクリームを除去します。
布が汚れなくなったら、クリームの入れ替え完了です。
イメージ 6

ここまで来たら、別のきれいな布で、いったん靴全体を拭きあげましょう。
この時点でかなりのツヤが出ています。

右足(手入れ前)
イメージ 7

左足(手入れ後)
イメージ 8

 左足のみ手入れ済。
イメージ 9
両足手入れ完了。
イメージ 10

無色のクリームを塗っているので、ここでやめてもよいのですが、履き込んだ黒い靴の場合、革の染色が抜けてしまうと無色のクリームを塗って磨いただけでは、色褪せた部分が目立ち古ぼけて見えてしまうので、同系色のクリームで補色してあげる必要があります。

補色する分、時間が余計に掛かりますが、可愛い靴がきっと色鮮やかに甦ります。
お金をかけてクリームや道具を揃えるのが嫌な人にはこの方法はお勧めです。
また最初から靴と同じ色のクリームを塗っても良いのですが、これだと汚れを落としている実感が湧かないので、単にクリームを塗っているだけのような感覚になってしまいます。
 
ただ、、どうしても限界というものがあり、やはり本職には勝てません。
乳化性クリームに含まれる蝋分は大した量ではないので、蝋の厚塗りで表面に膜を張るということはありませんが、半年に1回は本職のクリーナーのお世話になりましょう。
クリーナーを使った後は、速やかに保湿が必要です。
乳化性クリームよりも水分量が多いデリケートクリームという保湿クリームを靴全体に擦り込みます。
その後、乳化性クリームで通常のメンテナンスをしてください。
クリーナーは石油系のクリーナーと中性のクリーナーがあります。
石油系のクリーナーは、油を油で溶かすという基本スタンスが同じなので、実は革のリセットにはなっていません。私は石油系クリーナーの匂いが嫌いで、鉱物性油が革に良い影響を与えるとは思えないので、使いません。
お肌が乾燥しているからといって、ク〇5-56を顔に塗ったりはしないでしょう?
革も元は動物の皮ですから、石油系の油を塗って良い事はないと思うのです。
 
中性のクリーナー(リムーバーとも)は、革に優しい成分となっていますが、強力に脱脂してしまうので、汚れを落としたあとは速やかに保湿する必要があります。
でないと、洗顔後に化粧水をはたかなかった顔みたいに革もバリバリガサガサになってしまいます。
人間の顔なら、自ら脂を分泌して保湿に努めますが、革にはそんな器用なことはできません。

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