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1000lxのフラッシュライト

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2014年2月13日の記事で、
3.11で帰宅難民になった際、GENTOS SF-123が暗く感じたと書きました。

SF-123は、2006年に購入した1W砲弾型LED・コリメータレンズ仕様のフラッシュライトです。
コリメータレンズは現在でも各メーカーで採用されている集光タイプのレンズの1種ですが、1Wの砲弾型LEDは2011年時点では既に時代遅れなものでした。
当時、リチウム電池を使用したフラッシュライトであれば、3~5W出力の砲弾型LEDかパワーチップ型が主流になっていたと思います。
 
チップ型LEDは、砲弾型よりも小型・軽量で高出力になっています。
当時、手元にチップ型LEDのフラッシュライトはありませんでしたが、チップ型LEDの明るさは知っていましたので、1Wの砲弾型LEDは暗く感じてしまったのです。
 
砲弾型LEDは一つ一つの光量が弱く、フラッシュライトの光源として使用するには、
複数個を使用していました。
1W砲弾型は、2006年当時では突出した出力を誇る明るいタイプでしたが、当時でもLEDを複数個組み合わせた多灯型の3W・5Wライトは存在していました。

多灯型のライトは、明るくなりますが、LEDを平面に並べるので、大型化するのが当たり前でした。
現在主流のチップ型と違い、単体での出力が低い砲弾型はコストを低く抑えられるので、ライト本体も安価にできますが、明るくするには多灯型にするしかなく、明るさのわりに本体が大きくなってしまいます。
その後、1灯で3Wや5Wという砲弾型も出て小型化しましたが、多灯型に比べると高額だった上に、光が拡散するという特性はそのままだったので、近距離は明るいが長距離になると光が飛ばず、(遠距離用としては)暗いライトというイメージは払拭できませんでした。

現在でも販売されている安価なLEDライトの多くは出力の低い砲弾型LEDを使用しており、LEDを9個も使ってlm値を稼いでいます。
100~500円程度のもをスーパーやホームセンターで見かけます。
砲弾型を同心円状に9個並べるとかなり太いライトになってしまいますが、その太さに合わせて4AAA仕様になっているので、ランタイムが長く用途を限れば意外に重宝します。
ただ、LEDが9個もある迫力のフェイスに期待してしまうと、屋外では驚くほど使えませんので注意が必要です。

砲弾型LEDを採用しているライトが暗く感じるのは、LED自体の性能の他に、もう一つ理由があります。
ライトの明るさには、LEDや電球の出力、電池の電圧以外にリフレクターの性能が関わってきます。
リフレクターの性能とは、集光か拡散かということです。
リフレクターの性能でルーメン(lm)値は変わりませんが、光が遠くまで飛びます。
また、光が集中するため距離が近いと照射面のルクス(lx)値が上がるので、感じる明るさは増します。
光が拡散すると逆で、遠くに飛びませんし近距離でも照射面のlx値もそれほどでもありません。
どちらが良い悪いではなく、そのライトの特性を把握して適材適所に用いれば良いのですが、多くの人は見た目のインパクトと数値のみでライトの性能を判断してしまいます。

砲弾型LEDはチップ型と比べると一つ一つの出力が弱いので、明るくするには数を増やすか、出力の高いLEDにするしかありません。
後者はコスト高になるので、安いライトはコストを抑えるために低出力のLEDの数を増やします。
LEDの数を増やすと、
 
イメージ 1
ストリームライト プロポリマー4AA LED
 
こういうことになります。
LED1灯であれば、こうです。
 
イメージ 2
ストリームライト プロポリマー4AA スーパーLED

風防レンズからLEDまでの位置(奥行き)の違いが判るでしょうか?
ライトの口径を大きくしてリフレクターを深くすれば、集光率は高まります。しかし、多灯型でリフレクターを深くするとヘッドが巨大化しますので、限界があります。
 
LED多灯型のフラッシュライトは、リフレクターが犠牲になるので、大型化しない限り集光は望めません。近距離拡散型になるので、1~5m以内を広く照射するには適していますが、それ以上の距離を照らすのには向いていません。
また、屋外では光を反射する壁がないため、拡散した光は闇に吸収されルーメン値以下の明るさしか得られません。
だから用途を間違うと、とても暗く感じてしまうのです。
 
無照射(夜間室内)
 
イメージ 3

集光型 夜間室内 17lm(壁まで2m)
 
イメージ 4

拡散型 夜間室内 17lm(壁まで2m)
 
イメージ 5
 
先に紹介した2種類のプロポリマー4AAは、それぞれlm値が異なり比較できませんので、おなじlm値で集光型と拡散型のライトで比較してみました。
集光型は照射面が白飛びするくらい光が集中していますが、拡散型はフラットに全体を照らしています。
画像では、拡散型がかなり明るくみえますが、実際は家庭用蛍光灯の豆電球より多少明るいくらいです。
明るくみえるのは、カメラの性能と壁や天井の反射があるからです。
 
次の例はどうでしょうか。
 
イメージ 6
 
壁までは1m弱です。
拡散型は広く全体を照らす代わりに、1m先ですらピンポイントでは照らせません。
つまり、遠くは照らせないのです。
集光型は遠くまで照らせる代わりに、近距離ではあちこち照らすのにライトをいちいち動かさないといけません。
フラッシュライトの用途を間違うとどんなに高性能でも使えない、というのはこういうことです。
また、フラッシュライトをたくさん保持するのは、こういう理由があるのです。
 
明るいフラッシュライトは、男心をくすぐるアイテムですが、屋内で使用するにはあまり明るすぎても却って使いづらくなります。
屋内での非常用としては、20~50lmもあれば充分だと考えます。
ルクスでいえば、300~600lx程度でしょうか。
 
 
ルーメンとは、ライトが発する光の量(光束)のことで、純粋のライトの明るさを示します。ルクスとは、ライトで照らした先(壁や床など照射面)の明るさを示します。
 
ルクスはライトと被写体の距離が大いに関係し、距離が遠くなればなるほど下降します。つまり、1000lxとあっても、それが何m先のことなのかが重要なのです。
通常は1000lx(1m)という表示がしてありますが、m表示がない場合もあります。
m表示がない場合は、1mと考えても良いのですが、フラッシュライト(ハンディライト)の場合、1m先を1000lxで照らせてもあまり意味がありません。
眩しすぎて使えないのです。
かといって、距離が伸びればlx値は激減します。
 
例えば、80lmで照射角18°のフラッシュライトがあります。
このライトで1m先を照らすと1000lxですが、5m先は41lxです。
lx値は、lm値と距離と照射角度が関係しますので、これはあくまでも一例ですが、
フラッシュライトの性能として、80lmと表記されている場合と41lx(5m)と表記されている場合、1000lxと表記されている場合、どれに手が伸びますか?
 
誰しも1000lxという魔法にかかってしまうのです。
性質が悪いのが、1mという表記はあってもなくても問題がない、ということです。
事実、m表記がない製品はたくさんあります。
 
1000lx(1m)という明るさが必要とされるのはランタンなど一定の距離を継続して照らす必要がある照具です。
フラッシュライトのような指向性のある照具の場合、1m先を照らす範囲などは高が知れていますので、光が集中してしまいます。
17lmでさえ、2m先は画像の通りです。
 
1000lxのフラッシュライト、外で使えば問題ありませんが、
4D(単1電池4個)仕様で、重量が870gあります。
犬の散歩用としても重すぎると思うのですが、いかがでしょうか。
 
「1000lx」という見た目の数値に騙されないように気をつけましょう。
 

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