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雨の日の革靴

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先の記事で、
雨の日に革靴を履いてはいけない、特に茶色の革靴は避けるべき、
というのはデタラメ、と言いました。
ちょっと言い過ぎかも知れませんが、間違ってはいません。
 
なぜ雨の日に革靴を履いてはいけないのでしょうか?
なぜ茶色の革靴は避けるべきなのでしょうか?
 
実は事前の対策とアフターケアをすれば恐れる事はないのです。
現代では撥水加工という技術があります。
また、透湿防水性に優れた素材があるし、合皮靴やゴム長もありますが、
100年ほど前には、そんなものはありませんでした。
現代の革靴の原型が発祥・発展・完成したイギリスは日本以上に雨が多い国です。
一日の内に何回も天気が変わる国で、雨に弱い素材を用いて靴を作るでしょうか。
ちょっと不自然です。
 
先の疑問に対する大多数の意見は、
雨に濡れると革が傷む、塩を吹く、柔らかくなって型崩れする、色が落ちる、、、
茶色の靴は濡れて乾くと輪ジミになるので、どうしても履くなら黒の靴が良い、、、
というところです。
事実は事実ですが、正しくもないのです。
 
たしかに雨に濡れたままにしておけば、革が傷み、塩を吹き、型崩れします。
しかし、きちんとアフターケアをすれば問題はないのです。
以下は、ネットオークションで落札した履き潰された革靴を水洗いして、靴として
再生するまでの物語です。
前提の条件が若干違いますが、ずぶ濡れになったところからは同じなので、画像に
沿って、濡れたときの対応とアフターケアについて解説していきます。
 
ⅰ手元に届いた靴
イメージ 1
 
手入れされないまま履き込まれて埃まみれ、
履きジワ付き放題、爪先は反り返り、
底はボロボロ、ライニングも劣化しまくり、
の状態でした。
前処理として、ブラッシングでホコリを除去して、中性のリムーバーで汚れや
古いクリームを除去、革靴用のカビ防止剤を内外に吹き掛けて乾燥させました。
 
 
 
 
 
 
 
ⅱホコリを払ってプラ製のシューキーパーを入れた靴
イメージ 2
 
たったこれだけで、けっこう見違えます。
これをバケツの水につけ、革靴専用の石鹸で洗います。
画像にはアップできない汁がたくさん出てきました(失礼)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、ここからが本題とリンクします。
ⅲ水洗い後の靴
イメージ 3
 
画像は水洗いして、シューキーパーを入れて保型した靴です。
革底が微妙に黒ずんでいるのがまだ乾燥しきれていない跡です。
 
革靴が濡れ(らし)てしまったら、
まず乾いた柔らかい布で表面の汚れと水分を拭き取ります。
靴の中に新聞紙をギュウギュウに詰め込み、乾燥と型崩れの防止をします。
底が革底なら、踵を高くして底も通気させて一昼夜乾燥させます。
 
 
※詰めた新聞紙は、靴の濡れ具合によって一定時間後に取り替えます。
 
一昼夜乾燥させたら、新聞紙を抜いてシューツリーを入れて、さらに保型しながら
乾燥させます。これが先の画像の状態です。
 
2-3日して靴が完全に乾いたら、クリームでの保湿です。
乳化性クリームでも良いですが、水に濡れる事で、革が保っている水分も抜けて
しまっていますので、脂分を入れる前に、デリケートクリームという水分量の多い
クリームを靴全体に擦り込み、乾拭きします。
 
イメージ 4
 その後は、乳化性クリームを塗り込んで、基本のメンテナンスをします。
この靴は、黒の乳化性クリームを2種類塗りこんで、さらに補色と保革をしました。
(ⅳ左画像)
 ワックスは用いてませんが、黒の深みや爪先のツヤが最初と全然違うのが判りますか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
画像の靴は、水洗いからココまで丸1週間掛かりました。
こちらは水に漬け込んで洗っているので乾燥に時間が必要だったのです。
雨で濡れた程度なら、2~3日で乾燥するので基本のメンテをすれば、
すぐに履けます。
通常は、ここで終了です。
ただし、この靴は革底の張り替えとライニングの張り替えをしないと履けない
状態でしたので、メーカーに送ります。
 
こういうとき国内メーカーの場合、対応が素早いしサービスも良いですね。
『SCOTCH GRAIN(スコッチグレイン)』というメーカーは、正規品ならオールソール
張り替えを依頼すると、ライニングの張り替えも無料で対応してくれるうえに、
ワックスでのハイシャインまでサービスしてくれます。
(ハイシャインは、断る事も可能です)
そして1ヶ月後、綺麗に仕上がったウィングチップ君です。
イメージ 5
 
オールソール張り替えは1.5万円強の費用が必要ですが、オークションで3,000円で落札した靴ですから、修理代を合わせても市価の半額以下で入手したことになります。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いかがでしたか?
水に濡れた靴でもきちんとケアをすれば、まったく問題なく履けるようになります。
 
 
・・・忘れてました。
茶色の革靴の輪ジミについて。
輪ジミ(水シミとも)は、靴が濡れて乾くときに、革靴に付着した汚れが水シミの
縁に集まってしまう事でできる跡のことです。
イメージ 6
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
なんだか、「輪」ジミにはなってないですね・・・汗
 
とにかく、茶色の靴はこれができると目立つうえに自然には消えないので、
雨の日に履くなら黒の革靴といわれる訳ですが、実は輪ジミは黒の革靴でも
できます。単に目立たないだけです。
 
キチンと汚れを落として、手入れをされている(革が保革されている)靴は雨に濡れても輪ジミはできません。
これは実際に自身の靴で試した結果をお話しています。
仮に出来たとしたら、それは手入れにムラあったこということです。
とはいえ、手入れしたばかりの靴で必ず雨に遭うとも限りません。
茶色の靴を履いていて、急な雨に遭った場合、一番簡単な方法は靴を全部
濡らしてしまうことです。全体を均一に濡らせば、雨ジミは消えてしまいます。
ちょっと乱暴ですけど。
輪ジミができてしまったら、今回紹介した革靴の水洗いをすれば、綺麗さっぱり落とせます。
自信がない方は、お店にお願いした方がよいでしょうね。
 
お肌のシミも水洗いで落ちてくれれば、良いのですけど・・・
 

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