日本でスーツの着こなしが取り上げられ、広く浸透し始めたのは、ここ10数年の話です。
それまでは、着道楽か留学して本場で学んだ職人や紳士服のバイヤーが数人~数10人
いた程度だと思います。
私が服飾評論家の落合正勝氏の本を初めて読んだのが14年前。
当時、落合氏の存在を知っている人は、私の周囲では極めて稀でした。
そして氏の本を読んで、いかに自分が何も知らずにスーツを着ていたか、また周りにも
スーツをまともに着こなしている人がいないという事実に愕然としました。
欧米では、スーツやジャケットスタイルが普段着として定着しています。
ビジネス用の普段着、プライベートの普段着、遊び着、フォーマルという風に、
親から子、子から孫へとスーツ(服飾)のルールやマナーが自然と受け継がれています。
そのため、若い人でもごく自然にスーツを着こなす事ができます。
最近、初めて知ったことばかりの日本人がいきなり欧米人並みにスーツを着こなすのは、
まず不可能でしょう。
とはいえ、我々も文明開化、そして第2次大戦を経て西欧文化を取り込み続け他結果、
服装に関してははほぼ100%洋装です。
洋装をする以上、洋装のルールやマナーは守る必要があるのです。
地域性や気候条件に合わせて工夫・改良することは、問題ありません。
しかし、洋装の精神を踏みにじるようなルール改変やマナー違反は、絶対いけません。
私もえらそうに色々と述べていますが、まだまだ勉強中の身です。
ブログでは好き放題言っていますが、世間的には若輩者ですから、
残念ながら面と向かってダメだしをできる人は限られています。
さらに残念なことにスーツについて対等に話せる人は周りにはいません。
気の置けない仲間内の会話の中でも、スーツや着こなしの話になると、
「欧米人でもスーツを着ていない人もいる」、「ネクタイを締めていない人もいる」、
「ジャケットを着ていない」、「スーツのような仕事着に何万円もかける必要はない」
と反論を受けることもしばしばです。
彼らの言い分をもう少し詳しく聴いてみると、
「欧米人が全員、スーツを着ているわけではない」
「スーツの聖地と呼ばれるロンドンでもスーツを着ていない人はたくさんいる」
「なぜ、日本人ばかりがスーツを着なくてはいけないのか?」
「日本の夏にスーツを着るなんて正気の沙汰ではない」
「なぜスーツごときで、あれこれダメ出しをされなければならないのか?」
ということらしいのです。
同じ日本人として、彼らの言う事も理解できます。
しかし、それでも守るべきスーツのルールとマナーというものはあります。
長くなりましたので、本題については次回以降、お話をしようと思います。